中軽量車の(乗用車等)の排出ガス規制と試験方法について
中軽量車、二輪車を対象にした各種の排出ガス試験
JATAでは、中軽量車等を対象とした以下のような排出ガス試験が実施できます。排出ガス試験の委託実施をご検討中のお客様は、試験の具体的内容や実施希望時期、試験パラメータ等につきまして、JATAの技術部(03-6836-1585)に遠慮なくご相談ください。
(1) ガソリン自動車の排出ガス試験
(2) ディーゼル自動車の排出ガス試験
(3) 二輪車の排出ガス試験
(4) LPG、CNG、BDF等を燃料とする自動車の排出ガス試験
(5) NOx・PM低減装置の排出ガス性能評価試験
(6) 黒煙試験
(7) その他の排出ガス試験
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JATA昭島研究室の試験設備を使ってガソリン車やディーゼル車のうちの中・軽量車(乗用車、小型貨物車(総重量3.5トン以下)や二輪車の排出ガス試験を行います。ガソリン車、ディーゼル車以外にも、LPG、CNG、エタノール、BDFなど新燃料を使用する各種自動車の排出ガス試験も実施可能です。自動車の駆動方式別では、2WD(FF,FR)の他に4WD車でも専用のシャシダイナモメータを使って排出ガス試験が実施可能です。
保有するシャシダイナモメータは、2WD車専用のタイプ、並びに2WD車と4WD車のいずれにも対応可能な4WD用シャシダイナモメータ(2機)があります。さらに二輪車用のシャシダイナモメータも設置しております。
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実施可能な排出ガス試験モード
シャシダイナモメータを使って実行できる中・軽量車等の排出ガスの試験モードとして、以下が対応可能です
・JC08モード(ホット、コールド)、 10・15モード、 11モード、 (国内専用モード)
・フリーモード(様々な実走行状態の再現など、任意の速度変化を指令として与えた走行モード)、
・WLTCモード(国際統一基準モード) (我が国の最新排出ガス規制に適用されることになった試験モード)
・欧州試験モード、 米国試験モード
排出ガス試験の準備・実施状況
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ガソリン中軽量車の排出ガス試験の方法
試験車をシャシダイナモメータ上に設置して、決められた走行パターンをシャシダイナモメータ上で運転し、走行区間中の総排出ガス量や走行区間ごとの排出ガス量を測定します。シャシダイナモメータ試験室は室温25℃、湿度55%となるように専用の空調設備を使って制御します。排出ガス試験では、まず試験車重量に対応した等価慣性質量及び目標走行抵抗を設定します。ちなみに目標走行抵抗というのは、同じモデルの試験車をテストコース上で惰行試験させて、その際の減速惰行時間から各速度域における転がり抵抗及び空気抵抗を測定し、その結果を標準大気状態(20℃、1気圧、無風)の値に換算したものです。シャシダイナモに設定した走行抵抗が試験車に正しく与えられているか確認するために、シャシダイナモメータ上でも試験車を惰行させて、車両に加わる抵抗値が各車速域において目標走行抵抗値の5%以内に入るまで、シャシダイナモの負荷が自動調整されます。
ホットスタート試験の場合は、台上で十分な暖機走行を行った後に排出ガス測定を行います。一方、コールドスタート試験の場合は、試験車を一定温度のソーク室内に一晩放置して、エンジンが冷えた状態からエンジンを始動しモード走行を行って、モード全体の排出ガス量を測定します。
モード走行中に排気管から出た排出ガスの総量はCVS(定量希釈装置)に導入し、ここで希釈空気と均一に混合させた後、その一部を定流量でバッグに捕集します。モード試験終了後にこのバッグ中のCO,HC,NOxの各濃度をガス分析計で計測し、
それとCVSの総流量の計測値から、各ガス成分の排出量(g/km)を算出します。
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最近は2WD車でも、 4輪が回転していないと車載の電子回路が異常状態と判定して走行不可にする車が増えています。 こうした車の場合、JATAでは右図のような4WD車用シャシダイナモメータ設備を用いて前後輪を回転させて試験を行っています。
4WDシャシダイナモメータは、前後ローラの回転と負荷を連携して制御する通常の4WDモードの他に、2WD車で非駆動輪側ローラを駆動輪側に追従回転させるだけの制御モードも用意されています。
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ディーゼル中軽量車の排出ガス試験の方法
JATAにおいては、ディーゼル車の排出ガス試験もシャシダイナモメータ上での実車のモード試験によって行います。ディーゼル車の場合は、CO,HC,NOxの有害ガス成分に加えて粒子状物質(PM)の排出量測定も行うことになっているため、CVS装置ではなくて稀釈トンネル設備を用います。なお、ガソリン車でも気筒内に燃料を直接噴射するタイプの車については、粒子状物質の排出が懸念されるため排出防止の観点からPMも測定されることになりました。
ディーゼル車の排気管から出た排出ガスの全量を稀釈トンネルに導入し、ここで新鮮空気と均一に混合させて希釈します。この稀釈トンネルでは、〔排出ガス+希釈空気〕の合計が常に一定になるように臨界流ベンチュリを通して混合ガスを吸引します。
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トンネル内で均一に混合されたガスの一部を定流量で吸引サンプリングし、それを捕集フィルタに通すことによりPM分のみを捕捉します。モード走行中のPMの総排出量は、試験前後のフィルターの重量差並びにトンネル総流量と捕集サンプリング流量の比等から求めます。CO,HC,NOx及びCO2の排出量は、トンネルからサンプルした希釈ガスの平均濃度とトンネル総吸引流量から計算します。
M捕集フィルターの秤量手順
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軽・中量車の排出ガス試験モード(走行パターン)について
①わが国のこれまでの試験走行モード
・JC08試験走行モード
2018~2019年以前に国内の新型モデルとして発売された車に適用された排出ガス試験用走行パターン。コールドスタートとホットスタートで別々に試験し、測定結果を3:1で重みづけして排出ガス値を算出します。
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平均速度 | 平均走行速度 | 全走行時間 | 全走行距離 | アイドル率 |
24.40km/h | 34.68km/h | 1204sec | 8.159km | 29.65% |
・10.15試験走行モード
2010年までの排出ガス規制におけるホットスタート条件に用いられていた走行パターン。このほかにコールドスタート試験専用のモードとして11モードも使われました。
ホット条件とコールド条件で個別に規制値が設けられました。
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平均速度 | 平均走行速度 | 全走行時間 | 全走行距離 | アイドル率 |
22.72km/h | 33.10km/h | 660sec | 4.165km | 31.36% |
②わが国に導入されることになった最新の排出ガス試験モード(WLTCモード)
日本も参画している国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(UN-ECE/WP29)において策定された世界統一試験サイクル(WorldwideLight-duty Test Cycle-[WLTC]に基づき、わが国の走行モードが下図に示す試験サイクルに変更されることになりました。なおこの排出ガス試験は、すべてコールドスタート条件で行われます。この試験モードによって測定される排出ガスの許容限度目標値は、2018年の末ないし2019年末までに適用が開始されました。排出ガス規制は上記の期間以降に新型モデルとして発売された車に対して適用され、したがって車のモデル年によって適用時期が異なります。
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軽中量車の排出ガス規制値に関する情報は、技術解説の中にあるこちらのページをご覧ください。