自動車が走行する際のエネルギー収支を下図に示します。自動車エンジンは燃料(ガソリンや軽油など)が持つ化学エネルギーを燃焼させることで熱・力のエネルギーに変えます。熱エネルギーは冷却水や排気ガスで失われ(熱損失)、また車両自身の機械損失(動力伝達ロス、タイヤの変形や摩擦によるロスも含む)も最後は熱になって大気中に放散します。車両の走行エネルギーも、減速や停止時のブレーキ操作により熱に変わって失われます。(ただしハイブリッド車や電気自動車では、減速時に走行エネルギーの一部を電気に変えてバッテリーに蓄え、その後の走行に再利用しますので燃費や電費の向上につながります。)
すなわちガソリン車やディーゼル車では、燃料のもつ化学エネルギーを燃焼で熱エネルギーに変換しそれをエンジンで回転運動エネルギーに変えて動力をタイヤに伝えることで、かなりの重量(積載物含む)のある車を目的地まで移動させることが可能になります。
タイヤが燃費に関係してくるのは、タイヤの回転に伴う部材の繰り返し変形や路面との摩擦、タイヤ自身が受ける空気抵抗によって損失が発生し、結果的に燃料の化学エネルギーを消費するためです。このタイヤ損失のうち、約90%がタイヤ変形によるものといわれています。(1) 軸重を支えるため、路面に接触している部位が上図のように変形する。
(2) タイヤの回転により、その変形部位が周期的に入れ替わる。
(3) 右図に示すヒステリシス性により、タイヤにエネルギーロスが発生
(4) ロスは熱としてタイヤに蓄積された後、最後は大気や路面に放散する。
(5)タイヤの温度は、蓄熱量と放熱量が均衡するまで上昇する。
(6) タイヤのロスはエンジン出力で補填されるので、燃費に影響する。
タイヤ変形ロスの発生メカニズム
自動車タイヤは粘弾性としての性質を持つゴム部材で作られています。タイヤは路面との間で車の重量を支えているとともに、車を前進させる推進力を路面に与えます。その際には、タイヤが路面と接触する部位とその周囲で下図のような変形が生じます。
下の2枚の図はタイヤの変形断面を概念的に示したもので、変形の様子を強調して表示しています。変形部位は、タイヤの回転とともに変わり、路面に接地している周辺部位の変形が最も大きく、回転によりその部位が路面から離れると、変形が元に戻ろうとします。つまりタイヤの各部位は、1回転を周期とした繰り返し変形が生じることになります。ゴムは変形する時と戻る時に発熱するので、その積み重ねがタイヤ変形損失となって、ころがり抵抗の主たる原因になります。
タイヤの変形損失とは