先進多機能タイヤ試験装置(タイヤ単体シャシダイナモメータ)の構成
及びその制御・計測機能
(株)小野測器
先進多機能タイヤ試験
装置の外観
こうした機能により、屋外での惰行試験のような天候要因には左右されずに,安定的かつ高精度にタイヤの損失特性が評価できます。
モード試験時のタイヤの損失を測定するため、タイヤ軸とローラ軸にはそれぞれトルク計が備えられており、車両がモード走行した時と同等の条件で、タイヤ単体の損失率(kJ/km)などを演算で求めることができます。両試験法のギャップを埋める観点から、エコタイヤに期待される環境性能を、自動車ユーザーの関心(燃費)に沿った形で合理的に評価するためのタイヤの試験方法や評価指標などについて新しい取り組みが必要と考えました。
そこでJATAでは、研究連携協定を結んでいる(株)小野測器と共同で、同社の開発した先進多機能タイヤ試験装置の活用策を検討しました。その結果、タイヤの燃費影響度を直接的に把握できる新しいタイヤの試験・解析方法を開発することができました。研究の成果は、自動車技術会の学術講演会や論文等で発表しました。
(JATAによる自動車技術会での研究発表状況はこちらから参照できます。)
右下の図は、この先進多機能タイヤ試験装置の外観であり、下のブロック図は装置に組み込まれている機能を示しています。
試験装置のタイヤ軸とローラ軸にはそれぞれモータが接続され,タイヤ側を駆動することで試験モードの目標車速に追従する速度制御を行うとともに、ローラ側では車両時と同等の負荷を吸収します.車両の軸重に相当するタイヤの垂直荷重は、リアルタイム制御が可能です.ローラ側モータは,シャシダイナモメータ試験と同様に走行抵抗,慣性抵抗をシミュレートします。タイヤとローラは温度チャンバーに収められ、各々が独立の温度調節機能を有するため、タイヤ周囲温度とローラ表面温度を独立して制御・管理できます。現行の燃費試験法に則してエコタイヤの燃費改善効果を評価するには、評価対象のタイヤを試験車に装着してテストコースでの惰行試験(走行抵抗測定)及びシャシダイナモメータ上のモード試験(燃費測定)を行い、タイヤ間の燃費差を比較する前ページの方法を用います。しかしこの方法は,試験車両のほかにテストコースやシャシダイナモ設備,排出ガス測定システムなど大がかりな設備を必要とし、実験工数の負担が大きい、試験日の天候要因に左右されやすい等の問題がありました.
一方、日本自動車タイヤ協会(JATMA)の自主基準「低燃費タイヤ等の普及促進に関する表示ガイドライン」に基づき、タイヤのころがり抵抗係数(RRC)とウェットグリップ性能を組み合わせた「グレーディングシステム」(等級制度)により、「低燃費タイヤのラベリング」表示が行われています。タイヤのRRC測定法はJISD4234に規定されていて、試験タイヤをローラ面に所定の荷重で押し付けて80km/h 一定速で回した時の回転抵抗を測定し、荷重量で除してRRC値(N/kN)を求める方法です。このタイヤ試験と上記の燃費試験は、試験条件がまったく異なっているので、両者の換算係数を求めるのは一般に困難です。3.タイヤと燃費の関連性に基づくエコタイヤの新しい評価法