次に空気圧低下が実際の燃費の悪化を招く実験事例を紹介します。

 下の図は、3種類のタイヤA,B,Cでそれぞれ標準空気圧状態とそこから50kPa低下した空気圧のもとで、3種類の走行モード(渋滞路、JC08モード、高速道走行)を4WDシャシダイナモ上で走行させた時の燃費をJATAの昭島研究室で測定した結果です。なお同一条件でローラ上でのタイヤのころがり抵抗差を比較して見るため、シャシダイナモ側の吸収負荷は全実験で同じ値に設定してあります。

 ①の渋滞路走行では空気圧による燃費差は多少ありますが、タイヤ間の燃費差はそれほど出ていません。それは渋滞走行ではアイドリングの比率が大きくなること、また低速でエンジンの熱効率が悪い運転域を多用していたことが原因と思われます。

 一方、②のJC08モードと③の高速道走行では、タイヤのエコ等級の差がはっきり現れました。さらに、タイヤの空気圧が下がった状態で同じモードを走行しても、燃費が明瞭に悪化していることがわかります。このように空気圧が低下した状態では、タイヤの本来のエコ性能が引き出せないことがはっきりしました。

 つまり車の燃費対策としては、装着タイヤの選定に配慮するだけではなく、日常のタイヤ管理も非常に重要であるといえます。

 下図は、同一車にエコ等級の異なる3種類のタイヤを付け替えて、昭島研究室の4WDシャシダイナモメータ上で惰行させて、その惰行時間から求めた車のころがり抵抗です。またタイヤが標準空気圧の時と、それより50kPa低下した条件でのころがり抵抗も比較しています。

 エコ等級の最もよいタイヤCが最もころがり抵抗が低く燃費向上効果が期待できますが、そうしたAAAクラスのタイヤでも、空気圧が下がった状態ではころがり抵抗が増加します。

実験条件
 JATAでは自主研究として、タイヤの空気圧低下と燃費悪化との関係性を実験により調べました。その結果を以下にご紹介します。 (平成27年度のJATA調査研究発表会における講演内容の一部)
左の図は、タイヤの変形状態を強調して描いたイメージ図です。
 空気圧が低下すると損失が増加し燃費が悪化する理由についてですが、下図に示すように、空気圧が低下したタイヤは同じ荷重条件でもタイヤ断面の変形量が拡大し、その結果タイヤの繰り返し変形に伴うエネルギー損失が拡大します。すなわちころがり抵抗が大きくなりますので、これが燃費の悪化をもたらす主な原因と考えられます。

空気圧の低下がタイヤ損失の増加と燃費悪化をもたらす理由

タイヤ空気圧の管理が燃費対策の上でも重要とされています。空気圧が低下したタイヤのままで走行すると、ころがり抵抗が増加して燃費が悪化することが示されています。

6.タイヤ空気圧と燃費の関係

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技術解説

技術解説ー自動車用タイヤの低燃費性とその評価方法について6
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