図(E)燃費推計法により求めたタイヤ種別の各モード燃費値
等価慣性質量1250kg,排気量1.5Lのセダン型ガソリン車(以下,B車)に5種類のタイヤ(標準タイヤ,静音型タイヤ,及び3種のエコタイヤ)を装着した時の各種モードでの燃費値を本手法で求めた結果を右の図(E)に示します。
図の結果から、エコタイヤ同士でも燃費に差が生じるという予測結果が出ました。こうしたタイヤ間の燃費差を調べるには、従来の評価法ではタイヤごとに[車両惰行試験+台上燃費測定] が必要となり、設備や工数の負担が大きかったのですが、本手法を使えば、タイヤ単体試験のみで多種のタイヤのモード燃費を予測し性能比較が行えるようになります。すなわち実用的価値の高いタイヤ評価法といえます。
図(D)エコタイヤに交換した場合の燃費改善率の予測結果
図(C) 各走行モードにおけるタイヤB、Cの燃費の実測値と推計値の比較
図(B) 3種タイヤに対するモード燃費の実測値と推計値の比較方法
この推計手法の有効性を確かめるため、図(B)に示す方法でタイヤ違いによる燃費差を調べてみました。具体的には、エコ等級の異なるタイヤA,B,Cを試験車にそれぞれ装着してシャシダイナモメータ上でモード試験を行い燃費の実測値を求めました。一方、先進多機能タイヤ試験機でタイヤA,B,Cのモード走行条件でのタイヤ損失率を測定し、それぞれの差(上式のΔWD)を求め、(2)’式に当てはめて求めた推計燃費を算出して、シャシダイナモ試験で求めた実測の燃費値と比較してみました。
つまり燃費Fの支配因子は,(2)式のWFとWDに分けて整理できます。WFはその単位が示すように燃料の利用効率を示す指標になります。WFが大きい車ほど熱効率の良いエンジンを搭載しているといえます。一方、WDは車両重量や走行抵抗(タイヤ損失も含む),動力伝達ロスなど主に車体側の燃費要因の総体を示す指標であり、WDの小さな車ほど走行時の負荷が小さく効率が良くなるため、燃費向上が期待できます。
基準タイヤを使った時の燃費は通常の燃費試験で求めますが、同じ試験車に比較用タイヤを装着した時の燃費値を先進タイヤ試験装置の測定結果から演算で求める手法をJATAが開発しましたので、以下に説明します。
タイヤ交換後の燃費F’は、(2)式をベースに計算します。まず基準タイヤでの燃費値からモード燃料消費量(L)を求め、その時の車両仕事量(kJ)はシャシダイナモの計測駆動力または全走行抵抗の近似式と車速の積をモード区間で積算することで、WFを求めます。WFはエンジン効率の指標なので、タイヤを変えたことでエンジン使用域が若干変わってもWF自体の変化は少ないと仮定します。基準タイヤと比較タイヤを前頁の先進タイヤ試験機で各々モード走行条件で試験し、測定したタイヤモード仕事率の差に駆動輪数をかけることで両タイヤ間のWDの差(ΔWD)を求めます。それを 以下の(2)’式に入れれば、比較タイヤ装着した時の燃費F’を推計することができます。つまりタイヤ試験機による測定結果のみから、タイヤによる燃費差を演算してタイヤ間の予測燃費値を比較できることになります。
そこで基準タイヤで燃費を測定した車に別のタイヤを装着した場合の燃費変化を,タイヤ単体試験結果から予測する新たな手法をJATAが開発し、2012年度の自動車技術会春季大会で発表し、さらに論文としてもまとめました。以下にこの手法の概要を示します。
燃費Fは (1)式で定義される値ですが、この式の分子、分母にモード全体の車両仕事量(kJ)をかけて整理することで、 F は(2)式の形で表すことができます。
モード走行時のタイヤ損失率の評価と燃費影響度の推計手法
モード走行時のタイヤ損失率の評価