以下の式を使って、平坦路走行条件での値に修正した転がり抵抗値を算出します。
11.シャシダイナモ上で測定した転がり抵抗を平坦路走行時の転がり抵抗に換算する手順
①ホィールトルクメータ法
 これは図16に示すように、左右の駆動輪にホィールトルクメータを装着した試験車のタイヤをローラ側から回転駆動し、その時にホィールトルクメータが示す計測値から、上流側の動力伝達系損失抵抗を測定する方法です。
   ホィールトルクメータの精度:±1N・m (フルスケール:100 N・mの場合 ±1.0 %)

②設計値に基づく算出法
 エンジンまたはモータの出力軸からタイヤホィール軸までの抵抗を設計値に基づいて算出する方法です。 

③個別部品の回転損失を計測して積み上げることで求める方法
 エンジンまたはモータの出力軸からタイヤホィール軸までの個別の部品の回転損失抵抗を個別に計測し、それらの
合算値によって動力伝達系の回転抵抗を算出します。

 ①~③の方法がいずれも実施できない場合は、簡易的な手法として以下に記す④の方法も認めています。

④Rtireに固定値を与えて簡易的に計算する方法
  これはRtire=0.6 という固定値を与えて算出する方法です。すなわち全転がり抵抗のうちでタイヤ部分が占める
 割合を60%として定め、簡便に計算する方法です。
  なおこの方法を用いる場合の配慮事項として、曲率修正を行って求めた車の転がり抵抗値が実際の値より低くなって
 しまい、燃費評価に際して試験車側が常に有利な燃費値が算出されてしまうことを防ぐために、タイヤ損失割合を
 今回の実験値よりも低い60%という値を与えて計算できることにしました。この簡易法を使う場合には、あえて厳しめ
 の条件とすることにしています。
 ローラシャシダイナモメータ上で求めた転がり抵抗の値LCHDYから、車両が平坦路走行した時の転がり抵抗Lrolling resistを求める計算方法を以下に示すことにします。ただし転がり抵抗全体の中でタイヤ部分が占める割合Rtireが与えられなければ、Lrolling resistの答えは導くことができません。シャシダイナモ試験法分科会で行った予備実験の結果では、供試したタイヤと試験車の組み合わせではRtireの平均が69%という数字が得られました。ただしタイヤ損失が占める割合は、タイヤの種類(エコ等級など)や動力伝達系に使われている部品やそれらの技術の組み合わせ方によって変わってきます。また、試験車の動力伝達系のみの抵抗を求めようとすると、試験現場で保有している計測器等に依存するなどの制約があります。そこでJASO E017では、以下の①~④の4つの方法を使うことを認めることにしました。


図15 車両1台分の因子別回転損失抵抗(転がり抵抗)の内訳とその割合の計算結果
 前ページに記載したのは、タイヤ単体での転がり抵抗測定における曲率補正のやり方でしたが、試験車の転がり抵抗の内訳としては、タイヤ損失以外にもトランスミッションからタイヤ回転軸までの一連の動力伝達系の回転損失分も含まれたものです。なおこの動力伝達系の損失抵抗は、タイヤと違ってローラ曲率の影響を受けることはありません。つまりシャシダイナモのローラ上で転がり抵抗を測定する際は、前ページで示したタイヤへの曲率影響補正と分けて処理する必要があります。
 図15の左側は、車両1台の中での前後輪系の転がり抵抗を構成する各因子の系統を示しています。また同図の右側には各因子の大きさ及び全体の中での割合を実験で求めた結果を示してます。これらの数字は、車両やタイヤによってそれぞれの大きさや割合が異なってきますが、前ページに示した曲率影響補正の処理が必要となるのは、あくまでもタイヤ損失に関わる部分のみです。試験車全体の転がり抵抗は、シャシダイナモ上での定速走行試験のローラ駆動力測定や惰行試験での減速時間測定によって求めることができますので、全転がり抵抗にタイヤ部分が占める割合Rtire(%)を掛けたものに対して曲率補正を適用することになります。一方、残りの部分(動力伝達系の抵抗)については、ローラ曲率は影響しないので補正は行いません。その両者を合算することで、平坦路走行時の試験車の転がり抵抗をシャシダイナモ試験により求めることができます。
図16 ホィールトルクメータによる車両動力伝達系の回転抵抗の測定 

 


10. ローラシャシダイナモメータによる転がり抵抗測定での曲率補正の適用方法

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技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価(Part2)ーシャシダイナモ続編版
       
 4WDシャシダイナモメータを用いた台上での試験車転がり抵抗測定方法ー5

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