4WD車を4駆状態のままで試験できるのが4WD用シャシダイナモメータです。また2WD車であっても、実走行時と同じ4輪回転状態にして試験できます。このシャシダイナモメータは、下右図のように回転ローラと電気動力計の組み合わせで前後各輪用に2セット備えています。シャシダイナモメータの前後のローラは、試験車から見ると路面の代わりとなるものなので、両方のローラの回転速度が同じになるように制御しなければなりません。ただ前後のローラの回転軸が機械的に結合されている訳ではなくて、2台の動力計の吸収トルクと回転を複合的に精密制御することによって、正確な回転同期を行っています。なお4WDで試験する際は、4輪とも回転できる状態のままで車体側を拘束(固縛)することが、車両飛び出しを防ぐ上で必要となります。
電子制御化の進んだ最近の車では、走行時に前後輪のいずれかが全く回転していない状態は車側が異常事態にあると車側の電子制御装置が判定して、通常の走行をできなくさせるエラーモードとするように設計された車両が増えています。こうした車の場合はこの異常判定を解除する仕組みを知らないと、2WD車用のシャシダイナモメータでは排出ガス試験等ができなくなります。
(一般的にいえば、その車を開発したメーカー以外ではこのエラー発生機能を強制的に解除することが困難です)
そこでJATAでは、この種の2WD車を試験する場合は、4WDシャシダイナモメータを使って試験を行っています。この時は、非駆動輪側のローラを駆動輪側と同期回転させる特殊な制御モードを選択することにより、4輪回転状態で車を試験します。この制御では、非駆動輪側のローラを回転させるための動力計の回転力を検出して、これと同等の力を前輪側の抵抗力に自動加算させることにより、実走行時と同等の走行抵抗が駆動輪に加わる制御モードを使用して試験します。
なお、単純に非駆動輪の回転を駆動輪の回転速度に追従させるだけの制御モードも選ぶことができます。この時は、駆動輪側の転がり抵抗は実路走行で測定した値(4輪分)に設定するのが原則です。
前輪または後輪のみをローラ上に設置する2WD車用のシャシダイナモメータ設備です。なお、このシャシダイナモメータを使って4WD車の排出ガス試験等を行うこともありますが、その際は、4WD車を2輪駆動状態に改造して試験を行うことになります。2WD専用シャシダイナモメータは、回転ローラとそれに連結した電気動力計が1組のセットで構成されます。台上運転中に試験車が前方に飛び出すことを防止することが安全上必要ですが、そのための機構として、非駆動輪のタイヤをベルトで巻き付けて床面に固定する等の処置を行い試験車を確実に固定します。このシャシダイナモ試験では、非駆動輪は回転しませんが、実路走行時は4輪が全て回転しているため、非駆動側のタイヤや軸等の回転慣性が駆動実に作用するので、エンジン負荷に加算されてきます。この点で2WDシャシダイナモの試験では、実走行時とは多少の差が生じます。一方、非駆動輪側のころがり抵抗は、実路試験で4輪が回転している条件で測定した走行抵抗がシャシダイナモに設定され、これが駆動輪側に付加されるため、エンジンの負荷としては実路走行と同等となるようにしています。
2WDシャシダイナモメータでFF車を試験する時には、下図に示すよう車両を後側に下げて前輪をシャシダイナモのローラに載せます。その分だけ前方の車両冷却ファンを車側に前進させて、試験車との距離を一定にします。また走行中は、前輪が固定されていないので車体が左右にぶれやすく、そのままでは危険なので、チェーン等で車体の左右への動きを抑止する必要があります。
一方FR車の試験では、後輪をローラに載せるため、送風吹き出し口と車両との間隔がFF車と同じになるように、冷却ファンの位置はFF時よりも後退させることになります。こうした設置位置の問題から、ローラの前後に車両長以上のスペースを確保し、さらにCVS装置への排気導入管もこれに合わせた長さを確保しておく必要があります。
(2)試験車の駆動方式に対応したシャシダイナモの種別