○ゴム・樹脂を膨張・劣化させやすい性質がある。

○熱の影響により酸やスラッジ(固まり)を発生させ、品質が劣化しやすい。

○植物油由来の不飽和結合が残存するため、長期の保管で酸化安定性が損なわれ劣化の可能性がある。

○低温流動性の悪化、燃料系の目詰まり、噴射系へのデポジット、金属材料の腐食などの不具合。

 BDFの使用は軽油に比べて次の点が問題になりますので、高濃度BDFを使用する際は、日常点検や中長期の点検などによる細心の注意が必要です。
注)

 わが国では、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品確法)の施行規則の一部を改正する省令により、軽油規格にBDFの項目が追加され、右表のようなB5の強制規格が定められました。

 わが国で法律で認められるBDFの軽油混合割合は5%まで(B5)となっています。(試験用途を除く) 軽油と混合させずにBDFのみを車両に供給して使用する例もありますが、ある意味、品確法(揮発油等の品質の確保等に関する法律)の枠外での運用であり、車両にトラブルが生じても自己責任となります。つまり高濃度BDFの使用には十分な配慮注)が必要です。

 B5燃料の場合は、ディーゼルエンジンに手を加えることなく使用できますが、燃料自体は軽油と同じ扱いになりますので、混合されたBDFの分も含めて軽油引き取り税がかかります。さらに、軽油とBDFを混合する事業に関しても、国への登録が必要になります。

 BDFを燃料に用いたディーゼル車でも、排気対策の上では通常のディーゼル車と同様にNOxやPMの低減対策が必要になります。一方、BDFは含酸素燃料ですので、燃焼時の黒煙の生成が少ない特長があります。しかし逆に燃料の粘性が高い等の理由から、噴射圧が高くない旧式のエンジンではSOF(有機可溶性成分)を含むPMが発生しやすいので、こうした車には酸化能力の高い触媒装置を装備する必要があります。
 BDFはセタン価が高く、粘度は低い、そして自己着火性があるため、軽油ディーゼル車の代替燃料として利用可能です。またBDFは、比較的小規模の設備で廃食用油から製造することが可能です。ただし製造時の問題で品質の劣るBDFが供給されると、車両に故障等が生じる可能性があるので、注意が必要です。
 植物等の油(油脂)は、粘度の高いグリセリンに脂肪酸が3つ結合され た形をしたものですが、この油脂にメタノールと触媒を加えてエステル化処理することで、グリセリンと脂肪酸メチルエステルに分離し、さらに蒸留処理をしてメタノールや水を除去し、ディーゼル燃料として使えるようにしたのがBDFです。
FAME系バイオディーゼル燃料(BDF:Bio Diesel Fuel)について

 非食用のバイオマスから合成ガス(CO/H2 )を作り、フィッシャートロプシュ法によって軽油にごく近い性状の炭化水素軽油にした合成燃料です。なおバイオ資源からではなく天然ガスを原料に製造された合成軽油は一般にGTL(Gas to Liquid)と呼ばれます。この燃料も②と同様に使用上の問題点は少ないのですが、燃料の製造コストが高くつくなど課題が多く、まだ研究途上といえます。

③木材、草等を原料にした合成軽油(BTL :  Biomass To Liquid)

 水素化処理は、植物油と水素を高温高圧で反応させることによって、植物油アルキル鎖の部分を飽和炭化水素に変えた合成燃料です。性状は通常の軽油に近いことから、HVOを用いて都バスで試験走行を行った東京都の調査事業では、燃料性状に起因する問題点は特に見られないという結果が出ました。

②水素化植物油(HVO : Hydrotreated Vegetable Oil)

 植物の油脂は極めて粘性が高いので、そのまま利用したのでは噴射ポンプや噴射ノズルに析出物が付着する等の不具合が発生する可能性が高く、ディーゼル燃料には使えません。そこで原料油脂にメタノールと触媒を加えてエステル化処理を行うことで、脂肪酸メチルエステル(FAME)とグリセリンに分離し、さらに蒸留処理をしてメタノールや水を除去することで、粘度の低いディーゼル燃料として使えるようにしたのがBDFです。

 BDFは比較的小規模な設備でも製造可能ですが、製品の品質の安定性を得るには、ある程度の規模の製造プラントの方が有利です。

 欧米では菜種や大豆などから、東南アジアではパームなどを原料に製造されることが多いBDFですが、わが国で製造されるのは、各地域で回収した廃食用油を原料にしたBDFがほとんどです。

①FAME : メチルエステル化バイオディーゼル燃料(BDF)

軽油を代替するバイオ燃料のタイプとしては、以下のものがあります。

(4) 軽油代替バイオディーゼル燃料について

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