上に示す棒グラフの結果から、エコ等級の高いタイヤほど一般的にモード燃費が向上していますが、標準タイヤに対する燃費の改善率(図中の数字)を見ると、走行条件によって異なっていることがわかります。渋滞モードでの燃費改善率が低いのは、タイヤに無関係なアイドリング運転の比率が高いことやエンジン効率が劣る低車速域での走行が多いことが影響していると思われます。
一方、都市部での平均的な走行条件を代表するとされるJC08モードでは、AAAクラスのタイヤで約5%の燃費改善効果があり、さらに高速走行モードになると約8%の燃費改善が認められました。
したがってタイヤをエコ等級の高いものに交換することで、それなりの燃費低減効果が得られることがわかります。
タイヤ種別のモード燃費測定結果の比較
ころがり抵抗測定およびモード燃費測定を行った試験タイヤ
JATAではタイヤに関する自主研究の一環として、エコ等級の異なる3種類のタイヤを使って走行モード別に燃費を比較する実験を4WDシャシダイナモメータを使って行いました。
試験車は、排気量1.8Lの乗用車でCVT変速方式です。燃費の比較実験を行ったタイヤは、下記の表に示す3種です。
実験では、テストコースにおいて測定した各タイヤでの走行抵抗に基づいてシャシダイナモメータの負荷設定を行い、各タイヤで以下に示す3種類のモードを走行し、それぞれの燃費を測定しました。
タイヤのエコ等級の違いがモード燃費に及ぼす影響の比較実験の結果
公式の燃費試験法に則して各種タイヤの燃費関連性を評価する方法
しかし上記の方法では、タイヤ等級化(グレーディング)の結果と個々の車の燃費性能との関係が定量的に把握できない問題があります。その理由は、上記のタイヤころがり抵抗係数の測定法と表示単位(N/kN)が、実走行に近い条件を再現する自動車のモード燃費試験法や燃費の表示単位(km/l) とは体系的にまったく異なっているためです。
そこで複数のエコタイヤ間での燃費改善効果を定量比較する際は、以下の方法を用いるのが一般的といえます。エコタイヤに関する必要な情報をユーザーに提供する観点から、下図に示すようなタイヤのグレーディング(等級化)とラベルによる表示制度が実施されています。
これは下左図にイメージを示すタイヤ試験機により、一定回転条件下でタイヤのころがり抵抗係数RRC(N/kN)を測定して、右下表のような区分にしたがってタイヤの等級化(グレーディング)しラベルで示すものです。また安全性に関する指標としては、濡れた路面での制動性能の指標であるウェットグリップ性能も合わせて等級化し、下の絵に示すタイヤのラベル表示を行います。自動車タイヤは、燃費に影響するころがり抵抗性能の他にも、ブレーキ性能、耐久・耐摩耗性、ハンドリング性能、乗り心地、低騒音性など様々な性能が要求されます。燃費改善には、ころがり抵抗を低減させることが効果的ですが、他の性能、特に安全性を低下させないことがタイヤにとって最も重要な点です。
タイヤのころがり抵抗と路面が濡れた状態におけるブレーキ性能(ウェット制動性能)とは、一般的にはトレードオフの関係にあるといわれています。
そこでユーザーのために、エコタイヤの安全性能と環境性能の両立性に配慮して評価することが重要です2.低燃費タイヤの評価方法について