モード試験を行うにあたり、現在の試験規定では試験車ごとに路上走行抵抗を測定することになっています。ただ屋外での路上走行試験では、自然風の風向、風速の変化が空力抵抗に影響するとともに、外気温度や路面温度なども気象条件によって変化するので、これらが走行抵抗に影響してきます。結果的に気象条件の変化が実路での走行抵抗の測定結果を変動させてしまうという問題があります。つまり実路試験によって目標抵抗を安定して求めるのは、現実にはかなり難しいといえます。対策としては、風の状態や気温が安定した気象条件の日や時間帯を選んで惰行試験を行うなど、環境条件変化への対応には多くの苦労がありました。
 こうした背景から、公益社団法人自動車技術会では、シャシダイナモメータ関係の専門家で構成された専門の分科会(シャシダイナモ試験法分科会)の中で、この問題に対する有効かつ実用的な解決方法として室内試験を活用する方法についての検討を進めてきました。その結果を踏まえて新たな自動車規格(JASO E015)を策定しましたので、その内容を順次紹介してまいります。
次ページ以降で、同分科会での検討結果とそれに基づく具体的対策手法を説明します。

 

 実路試験によって測定された走行抵抗は、4輪回転状態でのころがり抵抗および空気抵抗の合計となります。一方、試験車をシャシダイナモ上で運転する場合は、そのままでは空気抵抗及び非駆動輪側のころがり抵抗が車に作用しないため、モード試験時には実路での目標走行抵抗とシャシダイナモ上で自然に発生する駆動輪のころがり抵抗の差CHDYを、ダイナモメータ側が試験車に与えます。(下図参照)

 

 モード試験におけるシャシダイナモメータの役割は、モードの速度パターンでシャシダイナモ上を走行させた時に、車の負荷状態が路上走行時と同等にすることです。ちなみに路上走行時の車の負荷(走行抵抗)は、車両の質量(回転慣性量を含む)と加速度の積によって決まってくる慣性抵抗と、車の外観形状と車両速度によって変わる空気抵抗、並びにエンジンからタイヤまでの車両内部の動力伝達系で生じる転がり抵抗の合計になります。ただ一般的に車の走行抵抗というのは、空気抵抗と転がり抵抗の合計のことを言います。
 この走行抵抗は、下図に示す路上惰行試験つまりニュートラルギヤでテストコース上を惰行させた時の車の減速時間を測定することによって測定することができます。惰行試験実施時は、その時の環境条件(風速、風向、大気温度、大気圧)を測定し、それら環境条件の違いが測定された走行抵抗に与える影響を補正する演算処理を行うことによって、標準大気状態(無風、20℃、1気圧)での抵抗値に換算します。これが排出ガスや燃費をシャシダイナモを使って測定する際の目標走行抵抗となります。実際には求めた目標走行抵抗FR を FR =A0+B0V+C0V2という車速の2次式で近似する処理を行って、その係数であるA0,B0,C0の値を、モード試験を実施する前にシャシダイナモメータの制御装置に設定します。

シャシダイナモ上のモード試験(排出ガス、燃費測定)における負荷設定の重要性

公益財団法人日本自動車輸送技術協会は、自動車の安全確保、環境保全に役立つ各種の試験、調査、研究を行うことで社会に貢献しています。

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技術解説

技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価(Part2)ーシャシダイナモ続編版
       
   シャシダイナモメータを用いた派生車両の走行抵抗算出方法1
                                        シャシダイナモ試験をJATAに委託するには
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