実路上の惰行試験により試験車の走行抵抗を測定する場合は、その時の環境条件(気温、風速、風向、路面温度、気圧等)の変化の影響が避けられません。試験法の規定では、気温、気圧、風速の違いを補正することが定められていますが、惰行試験中にこれらの環境条件が刻々と変化することも多く、そのことが走行抵抗測定の不安定化の誘因となっています。走行抵抗を安定して測定するためには、天候の条件が安定した日時を選んで試験すればよいと思われますが、それを行うには試験の日程調整や試験機材、人員のやりくり、準備などで試験工数の負担が大きくなり、試験実施者側の経費の増大につながってしまいます。
 安定した環境条件のもとで試験するという点では、空調設備の整った試験室にあるシャシダイナモメータを使った室内試験が最も適しています。しかし車の走行抵抗を測定する上で、路上試験と室内台上試験での条件の違い(タイヤ設置面の違い等)が車に与える影響を考えると、路上試験を完全にやめてしまうことも現実的ではありません。そもそも実路上とシャシダイナモメータのローラ上では、空気抵抗や転がり抵抗が異なってきます。
 そこで自動車技術会のパワートレイン部会シャシダイナモ試験法分科会では、安定した走行抵抗計測のための現実的な解決策を検討してきました。その結果、当分科会が考えた方法というのは、ベース車両の走行抵抗はテストコース上の惰行試験で正確に測定しておき、そのベース車とは外形面での違いが少ない派生車、つまり空気抵抗には差がないと見なしてよい派生車の走行抵抗は、ベース車との転がり抵抗の差分のみをシャシダイナモメータ上で測定して、派生車の走行抵抗を演算で求める方法ー差分測定法またはデルタ法と呼ばれます。具体的にはベース車と各派生車の転がり抵抗の差量を4WDシャシダイナモメータでの比較試験によって求め、それをもとに個々の派生車の走行抵抗を算出する方法となります。なお、タイヤのみが異なる派生車の場合は、タイヤ単体の試験装置(後述)を使ってタイヤの転がり抵抗の差を割り出し、同様に補正計算で求める方法も可能です。
 派生車の走行抵抗の具体的な計算方法は、次ページ以降で詳しく説明することにします。
 

 

 これまでの排出ガス・燃費のモード試験の規定では、対象となる試験車の走行抵抗をコース上で実測するという規定がありました。このため、例えばベース車両を基に作られた同一形状の派生車であっても、もし構造的な面で違い(タイヤ違い、重量違い、前後重量配分、エンジンや駆動機構の違い)があれば、車の走行抵抗に違いが生じる可能性があるため、それぞれの派生車についても個別に実路での惰行試験で走行抵抗を測定しなければなりませんでした。
シャシダイナモメータ試験の負荷設定における現状での問題点

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技術解説

技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価(Part2)ーシャシダイナモ続編版
       
    シャシダイナモメータを用いた派生車両の走行抵抗算出方法2
                                        シャシダイナモ試験をJATAに委託するには
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