左の図は、タイヤ条件及び車両質量が異なる派生車両を意図的に作り出し、これを使って路上での惰行試験から直接求めた目標走行抵抗と,台上での差分法から求めた目標走行抵抗値の傾向を調べた結果です。この結果から、両試験手法の同等性や測定のばらつき傾向などを確認した結果です。
これらのグラフは、路上惰行により実測した目標走行抵抗と差分測定法で求めた目標走行抵抗 の各々の偏差を各車速域ごとに比較した結果を示しています。これを見ると、路上実測による目標走行抵抗には、偏差が最大
14 N のばらつきが存在し、路上試験による測定結果の不安定性が如実に示されています。
これ に対して,4WDシャシダイナモメータを用いる台上差分法を適用して求めた目標走行抵抗は、そのばらつきが最大 3 N 程度の範囲内に収まっており、路上惰行法に比べて大幅に小さくなっていることから、測定の安定性と再現性が相当程度向上していることがわかります。この計測結果の安定性が、台上差分測定法の最大の特長といえます。
なお目標走行抵抗測定結果の平均値に関して、路上惰行試験法の結果と台上差分法の結果とを比較した結果を見ると、両者がほぼ一致していることがわかります。このことから、台上差分法で求めた走行抵抗は路上惰行法の結果とほぼ同等になるということが確認できました。つまり派生車の走行抵抗を室内試験のみによって求めることができるということがいえます。
これらのデータは、派生車の目標走行抵抗が、変動要素、不安定要素の多い路上惰行試験によらずとも、常に安定した結果の得られる室内台上試験によって測定できるということを立証したものと言えます。
派生車両走行抵抗の路上測定とシャシダイナモ測定の比較(差分測定法の有効性検証)
派生車両の走行抵抗を、テストコース上で直接測定した結果と、基準車両との転がり抵抗の差分を4WDシャシダイナモ上で測定することで間接的に求めた結果とを比較することにより、差分測定法の有効性の検証が行われました。なお以下に紹介する実験結果は、シャシダイナモ試験法分科会の活動の一環で実施した共同実験の結果をまとめたものであり、JASO
E015の解説編に掲載したデータをそのまま引用掲載しています。
この検証実験では、まずテストコース上で基準車両と派生車両の惰行試験をそれぞれ行い,両車両の路上走行抵抗を気温、気圧、風速・風向分の影響を規定に従って補正して、標準状態での走行抵抗、すなわちモード試験用の目標走行抵抗の値に換算した値を求めました。同一日に路上で惰行試験を各3回繰り返して、それぞれの惰行結果から求めた20km/h,40km/h,60km/h,及び80km/hにおける走行抵抗の平均値と偏差(ばらつき)を求めました。
次に基準車両と派生車両の両方を四輪駆動車用シャシダイナモメータ上で惰行させて,それぞれの試験で得られた台上走行抵抗から派生車両と基準車両の台上転がり抵抗の差を求め,基準車両の目標走行抵抗をもとにして派生車両の目標走行抵抗を計算しました。路上での惰行試験で求めた目標走行抵抗値と台上惰行試験手法によって求めた基準車と派生車の転がり抵抗の差から求めた目標走行抵抗の双方を比較することにより、差分測定法の有効性を確認しました。
解析結果を以下のグラフに示します。
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