わが国では、N2Oは有害物質としての規制対象には入っていない。
地球温暖化効果ガスとして、N2Oはメタンとともに京都議定書で取り上げられている。
地球温暖化対策として燃費向上に努力した効果を損ねることにつながるため、使用過程段階での尿素SCR車のN2O排出実態を調査し、必要に応じて適切な対策を検討する必要がある。
尿素SCRシステムを搭載した車両で、尿素水の供給が適切でなかった場合には、地球温暖対策では無視できないレベルのN2O排出もありうる。
(独)交通安全環境研究所のレポートでは、尿素SCR車の排気中のCO2とN2Oの両方のガスによる地球温暖化効果が、同クラスの排気未対策車のレベルを大幅に上回るケースがあったという実験結果が載っている。
尿素SCR搭載車
後段酸化触媒でNH3を酸化する際に、流入ガス中のNOやNH3が多過ぎるとN2Oが生成し大気中に放出
されてしまう。(燃焼室でのN
2O生成はそれほど多くない)
*N2Oは笑気ガスとも呼ばれ、麻酔等で使用されたこともある。ただし非医療での吸引は危険。
亜酸化窒素(N2O)の基本的な性質
地球温暖化物質である亜酸化窒素(N2O)排出の問題
上の図から、NH3やN2Oの排出増加を防ぐには、排出ガス中のNOx量とバランスした還元剤NH3の供給、すなわち尿素水の供給量を精度よくコントロールすることが重要になります。このために排気系に取り付けたNOxセンサの出力信号を制御系に入力して尿素水をコントロールすることなどが行われています。一方、エンジン運転条件からエンジン出口の排出ガス中のNOx量を車載コンピュータで演算で求めて制御に用いる方法などもあります。
しかし使用過程の段階で、SCRでの反応雰囲気を適正な状態に保つためのこうした複雑な制御を常に正確に行うのは、かなり困難な技術課題です。その結果、最新規制適合のディーゼル車でも排出ガスの不安定化(規制レベルを上回る排出増)が懸念されています。
下記に示す尿素SCRシステムの反応メカニズムから、反応雰囲気のバランスが崩れた時にアンモニア(NH3)と亜酸化窒素(N2O)の排出が増加するおそれが生じます。
尿素SCRシステムにおける
アンモニア(NH3)と亜酸化窒素(N2O)の排出の問題
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