シャシダイの負荷設定値𝐹_𝑐ℎ𝑑𝑦とモードの基準速度𝑉_𝑡a𝑟𝑔𝑒𝑡を使って、シャシダイナモ上のモード区間仕事量𝑊_ALRを次のように計算します。
試験時の車両拘束条件のもとで台上で試験車をローラ上で惰行させて求めた抵抗値𝐹_𝑐ℎ𝑑𝑦(車両側の内部抵抗とシャシダイナモによる吸収負荷の合計)を車速の関数(車速の多項式)で与え、これとモードの基準速度𝑉_𝑡a𝑟𝑔𝑒の積をモード区間で積算していきます。
 なお、減速域のようにマイナスの慣性が作用することで車両仕事がゼロになるような運転域(計算により割り出す)は、この積算処理の対象には含めないこととします。
ALR仕事の計算方法
 モード走行して排出ガスや燃費を測定した直後に、その場で試験した車の惰行試験を行い、そこで求めた試験車の台上転がり抵抗Fを車速の関数形で表します。この台上転がり抵抗とモードの各瞬間の指令車速から、モード走行全体の仕事量に換算した評価値WALRを計算します。このWALRに関して、走行抵抗設定時のものとモード試験終了後に惰行試験を再び行って求めたものとを各々求め、両者を比較することにより両方の拘束状態の試験車に対する影響度の差を定量的に比較検証する方法です。

ALR仕事による評価方法

 試験車をローラ上で走行させる時には、ダイナモメータで発生させた走行抵抗(慣性抵抗、空気抵抗など)のほかに、車両内部で自然に生じる抵抗があります。この内部抵抗には、車両動力伝達系での回転により生じる機械損失やタイヤの回転抵抗などが原因で生じるものです。さらに車両拘束によって車体が拘束点で受けた外力の影響も試験車の転がり抵抗に重畳してきます。
 このことから台上における前後輪の転がり抵抗 F(=𝐹𝑣_f_𝑚+𝐹𝑣_r_𝑚)を台上試験によって実測し、その値を使ってモード走行時の車両仕事量への換算値を求めます。これにより車両拘束の影響度を定量的に把握する方法であり、以下の2つの評価方法がJASO E016に規定されました。
  ①ALR仕事評価法
  ②ASR仕事評価法
 以下にその具体的な方法を説明していきます。 

JASO E016の規定ー車両拘束された試験車の台上走行抵抗をローラ上で実測して、車両拘束が試験車に与える影響度を定量的な指標により把握・評価する方法を規格化

 

 車両拘束では、運転中の試験車には余計な負荷を加えることなく確実に車体を拘束することが理想です。しかし車体側の拘束点の配置やチェーンを張る角度、設定した初期張力によっては、車体の拘束点に本来の走行中にはないような外力が作用することがあり、結果的に回転タイヤに余分な負担が加わることで、モード走行中の走行抵抗が増加する場合があります。このことはモード走行試験で計測される燃費値を悪化させる要因となるので、有効な対策が必要と考えられます。しかし車両拘束状態の良否を判別することは、車両の条件や拘束方法などによってそれぞれ条件が異なっているので、現実にはなかなか困難でした。そのため現場の車両拘束作業では、各現場での流儀や試験担当者の理解、現場の作業者の経験、作業技量などに依存する面が多く、個々の現場での実態もわかりづらいというのが実状です。
 そこで車両拘束に関わる新規格を策定するにあたり、車両の拘束状態を定量的に調べられる評価方法や拘束状態の良否の判断に必要となる評価指標の算出方法などに関して、自動車技術会シャシダイナモ試験法分科会で検討を進めてきました。その結果を取りまとめて2018年3月にJASO E016が制定されました。この規定に記載された評価方法を用いることにより、例えば試験車の負荷設定直後とソークのために車両撤去し再設置した後の車両拘束条件の同等性を数値として比較検証することができるようになりました。
 以下ではその評価方法の概要について説明します。

9.JASO E016に示された車両拘束状態の定量的評価方法の解説

 ー台上転がり抵抗に対する車両拘束の影響度を考慮した評価指標の算出方法ー



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技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価(Part2)ーシャシダイナモ続編版
       
   4WDシャシダイナモメータにおける車両拘束及びその評価方法10
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