ALR仕事とASR仕事の各評価値に含まれる中身の違いを以下に概念的に図示します。

両手法で求める評価値の物理的意味の違い

 車両に試験モードの速度変化をローラ側から実際に与えて、その時の各瞬間のローラ駆動力の値からASR仕事を求めて拘束状態を評価する方法です。この試験結果から、車両の拘束条件の影響度を動的かつ定量的に評価します。ASR仕事評価法のメリットとしては,①のALR仕事評価の方法に比べて車両拘束状態によるモード走行条件への影響がより直接的に反映されている点にあります。
 ただしASR仕事評価では,タイヤがローラ側から回される状態で車両の拘束状態を評価することになるので,車両が自らの力でモードを走行する本試験での運転条件,つまり駆動輪に発生した車両推進力の反力が車両拘束点に加わった状態までは再現できていない点は弱点といえます。したがってASR仕事は,モード試験時の車両側の全ロス仕事まで含むものではないということになります。また車両の種類や構造によっては,ローラ側を回して車両にモードの速度変化を与えることで,車両のパワートレイン系に何らかの悪影響を及ぼす場合もまれにあるので、この点には注意が必要です。
 なお,ASR駆動させた時に計測できるローラ表面力の極性は,シャシダイナモメータを負荷吸収時に計測したローラ表面力の極性とは逆になるので、この点にも注意が必要です。
②ASR仕事による評価
 ALR仕事というのは、試験車を台上惰行させて求めた台上での転がり抵抗に、シャシダイナモメータから付加された吸収負荷を合算し、それにモードの指令車速を掛けて積算したモード走行時の車両仕事量のことです。試験車に設定された走行抵抗に基づくモードALR仕事量と、ソーク後に車両を再設置、再拘束してモード試験を行った直後に行う惰行試験で測定した転がり抵抗に基づくモードALR仕事量の両者を比較することで、両方の条件での車両拘束状態の違いやモード試験への影響度を比較評価します。
 試験車をシャシダイナモメータ上で惰行させて,その減速時間から車両側のロス(抵抗)を測定し,これを車速の関数に置き換えたものをALR走行抵抗と呼びます。
  車両拘束状態の違いによる燃費影響を評価する観点から,減速状態のようにマイナス慣性力が作用することで車両側の損失仕事が実質ゼロになる状態(慣性抵抗を含めた走行抵抗式から算出)及びアイドリング時は, ALR仕事の計算対象に含めないようにします。
 ALR仕事による評価では,車両拘束した状態におけるタイヤロスへの影響を見ることになります。この評価法のポイントは,モード試験の前日に行う負荷設定・検証後のALR仕事と試験車ソーク後のコールドスタートのモード試験終了後の惰行試験結果から求めたALR仕事とを比較し,両者の一致度から、車両拘束条件の同等性を定量的に比較検証できます。なおALR仕事による評価方法の利点は,台上惰行試験がどのような車両でも比較的容易に実施できるので,車両拘束条件の違いを簡単に数値化できる点にあります。
 ただALR仕事評価は,あくまでも台上惰行という走行条件で測定した転がり抵抗差に基づく相対比較です。したがってモードパターンを実際に台上走行した時のように、車速が刻々と変化する状態での評価にはなりません。つまり車両の拘束条件が速度変化する車両の台上での位置移動やそれがタイヤ損失にどのように影響したかまでを評価判定することはできません。すなわち実際のモード走行との関連性までは把握しにくい点が弱点といえます。
①ALR仕事による評価
ちなみに両評価指数の物理的意味を整理すると、次のようになります。
JASO E016で規定された車両拘束の評価方法は、モード走行条件における2つの指標、つまり、
 ①ALR仕事量評価指標  ②ASR仕事量評価指標 を求める2通りの方法です。
なおJASO E016では、この2つの評価指数を共に算出することは求めていません。両手法には特性上の違いがあるので、評価目的に応じた使い分けをして活用するのが良いでしょう。

10.JASO E016の車両拘束状態の評価手法及び評価指標の意味

   

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技術解説

技術解説ーシャシダイナモメータによる車両評価(Part2)ーシャシダイナモ続編版
       
   4WDシャシダイナモメータにおける車両拘束及びその評価方法12
                                        シャシダイナモ試験をJATAに委託するには
       

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